<台湾の李登輝元総統逝去に対して、韓国の反応はあまりにも冷たいのではないかと思われるものだった。その理由は……>
7月30日、台湾の李登輝元総統が逝去された。台湾出身の最初の総統であり、直接選挙の実施や多党制の導入等、台湾の民主化に大きく貢献し、「台湾民主化の父」と呼ばれる彼は東アジアの歴史において重要な役割を果たした人物でもある。
彼に対する日本の反応は、ほかの国とは少し違う。戦時中、京都帝国大学に通い、学徒出陣により日本軍に入隊していた彼は終戦後においても日本との縁が深く、代表的な親日家としても有名だった。安倍総理が「誠に痛惜の念に堪えない。総統は日本と台湾の親善関係、友好増進のために多大なご貢献をされた」と追悼の意を表したことからも日本にとって彼が特別な存在であったことを知ることができる。
あまりに冷たい韓国の反応
これに対し、韓国の反応は近隣国家である台湾において偉大な業績を残した彼に対してあまりにも冷たいのではないかと思われるものだった。文在寅大統領は彼の死に対し公式にメッセージを発することもなく、外交部や駐台湾韓国代表部もホームページやSNSを通じて李総統に対する追慕のメッセージを送るどころか、彼の逝去について言及することすらしなかった。
與此相對,韓國對於近鄰國家台灣的、留下偉大事業的他,被認為是不是太過冷淡了。文在寅總統對於他的死,並沒有發出官方訊息。外交部以及韓國駐台代表處在首頁或者 SNS 上,不要說發出追慕的訊息了,甚至對於他的逝去,連提都不提
マスコミの報道も大差ないものだった。公営放送であるKBSは一日の出来事を総括的に振り返る「9時のニュース」でさえも李総統死去のニュースが伝えられることはなかった。新聞記事が形式的にごく簡単な彼の経歴と死を伝えた程度である。韓国が、近隣国家である台湾の政治指導者の死に、これほどまでに無関心を装う理由は何か。
理解しがたい李元総統の「親日」と、中国への忖度
これにはいくつかの理由が挙げられる。最大の理由は中国に対する忖度だ。韓国は1945年の終戦以来、蒋介石の国民党政府を「恩人」と位置付けてきた。日本統治時代、中国本土に亡命していた朝鮮の抗日運動家たちを支援してくれたことに対する感謝である。それは国民党政府が内戦に破れ台湾に移してからも続いた。そこには過去の「恩」もあったが、朝鮮戦争以降、台湾と韓国には「反共」という共通の価値観を持つ者同士の「絆」があった。
だが、1992年韓国が中国と国交を結ぶ同時に台湾と断交。そして中国が超強大国として浮上した現在、韓国において台湾は忘れられた、いや、忘れたい存在となった。中国の前では到底、台湾に対する親しみなど表現することができないという現実。中国の目を気にせずに発言することなどできないのだ。韓国が米国のTHHADミサイルを配備したというだけで中国から経済報復を受けたという経験、ひどく痛い目にあったことを多くの韓国人は鮮明に記憶している。そんな韓国の立場では、中国が最も敏感に反応するトピックの一つである台湾について、安易に思いを述べることなどできないのだ。
もう一つの理由は李総統が「親日家」だということだ。李総統は日本軍少尉という経歴を持つのみならず、靖国神社を参拝するなど、韓国の立場から見れば非現実的な人物だ。朝鮮と同じ境遇、つまり、植民地支配を受けた人間が何故、新日家でいられるのか、韓国人の目には理解しがたい人物だったのだ。
韓国のある新聞は李総統が日本軍少尉となったことを「強制徴集」と表現している。「自分の意思に反して強制徴集される=被害者」であることが常識となっている韓国において李総統の日本愛は不可解でしかない。強制徴集された被害者でありながら、親日家である同時に、国民から尊敬される人物の存在を韓国マスコミはうまく説明できないのだ。
另一個理由就是李總統是一位親日家。李總統不只有日本軍少尉的經歷,還參拜了靖國神社。和朝鮮一樣的境遇,也就是說,受到殖民地支配時期的人物,但是為什麼?成為了親日家。從韓國人的眼中是很難理解的人物
韓國的報紙以李總統被強制徵集為日本軍少尉,如此說明。和自己的意願背反的強制徵集=被害者,視為常識的韓國裡,對於李總統的愛日本只是不可解。
強制徵集的被害者卻又是親日家的同時,還備受國民的尊敬,對於如此人物的存在,韓國的大眾媒體很不好說明
韓国では「親日家」は業績があっても、死後も批判を受け続ける
李総統の死に先立つ7月10日、韓国では朝鮮戦争の英雄、白善燁元陸軍参謀総長が逝去した。1950年の朝鮮戦争初期、絶体絶命の危機に瀕していた韓国を救ったのが当時師団長であった白善燁将軍である。彼は間違いなく朝鮮戦争において最高の功績を誇る軍人だ。彼は、当時韓国軍と共に戦った米国においても高く評価され、韓国に赴任した韓米聯合軍司令官や駐韓米国大使は彼の自宅を訪ね、挨拶を交わすことが長く恒例行事となっていた。
ところが彼の死後、韓国内で起こったのは彼に対する批判の声だ。彼は過去に満州軍の中尉、つまり親日派であるのだから彼を国立墓地に埋葬するのはけしからん、とい主張が聞こえてきた。これは韓国の左派陣営、与党を中心に広がった意見だ。朝鮮戦争における英雄だったとしても過去に日本に協力した人間を英雄として扱うべきではないという意見が優勢になるのが現在の韓国の姿だ。
見方によっては白善燁将軍と李登輝総統は共通点が少なくない。植民地に生まれ、日本あるいは満州国の将校を務め、終戦後にはそれぞれの祖国の為に大きな業績を残した人だという点だ。ところが一人は死後にまで親日派だったと非難を受け、もう一人は民主化の父として多くの人々から感謝されるなかで眠りにつき、追慕されている。
親日の国家の英雄は、「不都合な事例」?
もしかすると韓国が李総統の死についてあまりにも無関心を貫いているのは、他国では親日派も国家の英雄になれるということを認めたくない気持ちの表れなのかもしれない。少なくとも韓国の現政権の立場から見ればそれは「不都合な事例」に違いない。ちなみに、昨年1月に元慰安婦の女性が亡くなった際には自ら葬式に参列し哀悼の意を表していた文在寅大統領は、白将軍の葬式には弔花を送ったものの参列はしなかった。今の韓国においては親日の過去を持つ「救国の英雄」よりも「(日本からの)被害者」がより重視されるということを大統領自ら示したのである。